2019-10-13から1日間の記事一覧

#1 壁を越えて 礫 クラモリ

「レキ、おはよう。目が覚めたみたいね」 誰かにそう言われて目覚めたレキ。巣立ってからの記憶がない。気づいたら今いる部屋に寝ていて、目が覚めた。 「クラモリっ!?」 目が覚めるとそこにはクラモリが座っていた。クラモリ、変わっていない。ある日突然…

#2 フラの街 白羽 クウ

自分がいた建物を出て街へと駆けて行くレキ。広い草原の一本道を走って行く。道の右側の土地には大きな田んぼが広がり、左側にはグリの街にもあった、風力発電の風車がいくつもそびえ立ち、風に揺られくるくると回っていた。 数分走ってだけで街にたどり着く…

#3 クウ 白羽連盟 トーガ

「クウ!」 レキは声を張り上げてクウの名前を呼ぶ。猫と遊んでいたクウはその手を止め、自分の名前を呼んだ方に目を向けた。 「レキ、ひっさしぶりー!」 クウは満面の笑顔で手を高々と上げ、そう返事をした。クウ、クラモリと同じで何も変わってない。全て…

#4 カフェ 仕事 冬

「ついたーここだよー」 クウに案内され、着いたのは中央広場の近くにあった小さなカフェだった。グリの街にいた時、クウが働いていたカフェととてもよく似ていた。 「あたし、グリの街では2年しか働いてなかったけど、それが結構ここで役に立ってるんだ。今…

#5 白羽の規則 保護者 そして春

家につくと、その日1日、色々なことがあって、レキは気疲れしたのかすぐに眠りについた。今いる部屋が自分の部屋なのか?そこは使っていいのかなどの疑問はもちろんあったが、クラモリがそばにいる安堵がレキをすぐに眠りへと誘った。 次の日、レキが目覚め…

#6 新しい白羽 シルバーホーム あらたな生活

こうしてフラの街にも冬を終え、春がやってきた。外は暖かくなっており、羽袋はもう必要なく外出ができた。 そしてある日、レキとクラモリの住居に一通の手紙が届いた。そこにはこう記されていた。 「クラモリ、レキへ 新たに壁を超えた灰羽が来られたし、た…

#7 契約 巣立ち 規則

クラモリは手紙を手にすると、恐る恐る開封した。そしてそこにはこう記されてあった。 「クラモリへ 本日夕方の5時までに寺院まで来られたし。もし姿を表さない場合は強制退去を命じる 白羽連盟」 クラモリはその手紙の読むと、じんわりと涙を浮かべ、肩を落…

#8 迷走 ネムの彷徨 あらたな協力者

クラモリがいなくなってからすっかり元気のなくなったレキ。仕事でも張り合いがなく、屋敷の主人からかなり心配され、保護者であるネムのところに何度も事情を伺いに来た。 「最近、レキが元気がないんです。やはりもともとの保護者であった人が帰郷してしま…

#9 ネムの焦燥 時の流れ そして夏

シルバーホームに戻ると、ネムはレキの頰を思いっきり叩いた。 「レキ、レキ、自分が何をやったのかわかってるの!?あたし、すごい心配したし、もう少しで自警団に捕まってまた罰を受けるところだったんだよ?いくらクラモリがいなくなったからって、さびし…

#10 再び 灰羽の記憶 新たな試練

連盟から手紙が届くと、ネムとレキとクウはすぐに向かった。次はどの灰羽がこちらに巣立ってきたのだろう? 「だーかーらー、そんなまどろっこしいことはいいって。早く手当と手帳ちょーだいよ」 「そうはいきません。きちんとこちらのルールを聞いて頂かな…

#11 灰白色 グリの街 葛藤

ネムは連盟に着くとすぐさまトーガに事情を話した。レキの羽の下部が少し灰色じみている。カナが指摘した時にちらっとみただけだが、ネムはその箇所がどんな意味をなしているかをなんとなく察していた。 「あれは、レキが繭から生まれてきた時、羽が黒かった…

#12 街の歴史 姉妹都市 灰羽とは

「その昔、このグリの街がまだなかった頃、ここの場所は鉱山だった。そしてお前たち灰羽の証でもある光輪の材料である鉱物が発掘されたのだ」 「あの鉱物は、人体の側にあると発光し、形にすると多大な光力を発揮する偉大なものだった」 「そしてフラの街に…

#13 凄惨 朱色 晩夏

ネムは街に戻ると、白羽連盟に寄らずシルバーホームに戻った。とにかくレキを一目でも見なくてはとおもった。 広間に入るとレキの姿がない。おや?どこに行ったのだろう? 「だーかーらー、やめなってレキ!!一体どうしちゃったのさ!??」 奥の部屋からカ…

#14 クウ一人 五人目 晩夏の昼

連盟から手紙が届き、その内容を開いたカナそこにはこう記されていた 「新たに壁を超えた灰羽が来られたし。白羽連盟で保護中。至急こちらまでこられたし。今回はすぐに来ることを命ずる 白羽連盟」 「ネム!連盟からまた手紙がきたよ!新しい灰羽がきたって…

#15 クウとの再会 ラッカ シルバーホーム

ラッカが目覚めるとそこは見たこともない部屋だった。なぜ巣立ってからの記憶がないんだろう?気づいたら今いる部屋で目が覚めた。それはまるで灰羽として繭から生まれた時と同じ感覚だった 「えと、ここは?」 ラッカはとても混乱していた。たしか、ヒカリ…

#16 廻り合い 言葉 再生

「さあ、着いた。ラッカここだよ。シルバーホームっていうんだ」 「わあ、広い!オールドホームと似てる感じだね。というか街がグリの街にそっくりだね。やっぱり」 シルバーホームはオールドホームと違って、立派な石造りの家だったが、裏に空き家が何件も…

#17 秋口 ヒョウコ ラッカの想い

ラッカがフラの街に来てから数日が経った。 ラッカはシルバーホームに住むようになってから、本来ならカナが連盟からの斡旋で時計塔の仕事についたように、寺院の掃除の仕事に就く予定だった。しかしレキがこのような状態になってしまったことと、ネムが今ま…

#18 迷走 ミドリ 二人の真意

「ヒョウコさん、待って!」 懸命に走るヒョウコの後を追いかけるラッカ。シルバーホームからでて、街の方にいく途中だった。ちょうどヒョウコは街に駆けていったのでラッカは必死についていった 街まで走っていくと、ヒョウコはどこか路地裏に入っていった…

#19 会話 真相 二人の想い

「まずはあたしから話すわ。とにかくヒョウコはもう自分のやったことでレキだけじゃなくてあんたたちボロ屋敷の灰羽、今は白羽ね、に申し訳が立たなくてしょうがないのよ。特にネムにね」 ミドリが先陣を切って話す。え?申し訳ない気持ち?一体どう言うこと…

#20 決意 保護者 真摯

街から自分の来た道を辿って戻るラッカ。一歩一歩の足取りが重い。こんな時、レキがいつも一緒にいてくれた気がする。 「あ、ラッカ!」 ネムの声がした方を向くと車椅子にレキを乗せたネムがいた。どうやら少しづつでも後をつけてきてくれていたようで、戻…

#21 交代 相互 異例

夕方 五人はシルバーホームを出て連盟に向かった。ラッカの言っていた相互保護者の許可を得る為だ。果たしてこの申請は通るだろうか? 「五人で連盟までいくのって初めてだね!なんかみんなでこうやっていけるのって嬉しい!あとはヒカリもいればいいのに!…

#22 過ぎ越しの祭り 暗澹 願い

フラの街にも冬がやってきた 街全体が過ぎ越しの祭りのムードになって、あらゆる場所に鈴の実の市がたった。ラッカはちょうどこの時期にレキが巣立ちをしたのを思い出した 「今年ももう終わりだね。そういえばさ、去年はあたし、マスターと二人で越したけど…

#23 ネムの想い 話師 深夜

ネムにとって、レキとの関係はなによりも複雑だった。一番近くにいて、一番長く時間を過ごした仲間であった。 「ラッカ、私はね、レキの保護者になってからは、そんなに時間が経ってなかった。この街にきて、クラモリがいなくなったのが春で、ラッカがきたの…

#24 ラッカと話師 本来の姿 クウとカナ

シルバーホームを飛び出したラッカ。一目散に白羽連盟の寺院に向かう。夜遅くにカナの使っていた自転車があったが、カナがいなかったので借りることができず、走って行くことにした。 寺院につくと、夜遅くだったが、そこにはトーガがいた。トーガはラッカを…

最終話 オールドホームの灰羽達

「レキ!レキ!」 ラッカは一心不乱にシルバーホームに向かった。何か言い知れぬ不安がラッカの胸を覆い尽くしていた。 家にたどり着き、中に入る。電気が消えている。慌てて電気をつけて部屋を確認すると、ネムがベッドにもたれかかって眠っていた。 しかし…

エピローグ 1 その後

次の日、ラッカはいつもより早く目が覚めた。ネムもクウもカナもヒカリもまだよく眠っていて起きていない。あれ?レキがいない。たしかラッカはレキの一番近くで眠っていたはず キッチンの方から、なにやら音が聞こえる。誰かが朝食を作っていた 「レキ?」 …

ラストエピローグ シルバーホームの白羽達

「では、以上で手続きは終了です。ご苦労様でした。違う場所でも頑張ってください」 「ありがとうございました。色々とお世話になりました。あの双子がこちらに来たらまたその時はよろしくお願いします。」 ラッカはぺこりとお辞儀をすると、連盟を後にした…