#12 街の歴史 姉妹都市 灰羽とは

「その昔、このグリの街がまだなかった頃、ここの場所は鉱山だった。そしてお前たち灰羽の証でもある光輪の材料である鉱物が発掘されたのだ」


「あの鉱物は、人体の側にあると発光し、形にすると多大な光力を発揮する偉大なものだった」


「そしてフラの街に住む住人はその鉱物が取れるようになってから急に景気が良くなった。街は観光地としても名高くなり、国のはずれにある田舎だったが、汽車も通り、終点の駅がフラの街にできるようになった」



「そしてフラの街で商売をする人、観光客が溢れたので、鉱山を切り崩し、もう一つ街を作ることになった。フラの街との姉妹都市、グリの街を」


なるほど、こうしてグリの街は生まれたのか。とネムは納得した。


「グリの街ができるとさらに人々は活気を増した。フラの街とまったく同じ作りだったために人々は街にまよわなかった」


「そしてあるとき、お前たち灰羽が生まれるようになった。一体どこから来たのか?なぜ背中に羽が生えているのか?それは誰も分からなかった」


「しかしグリの街の住人はお前たちをひどく歓迎した。きっとこれは天の使いだ。この街を発展させたのもきっとこの灰羽達のおかげだとみな信じた。しかし灰羽は生まれる前に見る夢以外は記憶をなくしていたので、夢の内容で名前がつけられるようになった」

 

「しかし灰羽達は酷く体が弱く、何か支えのようなものが必要だった。そして結局それがあの光輪だったのだ。お前たちは光輪の力よって歩いたり、動いたりすることができるのだ」


「そして街は灰羽たちを歓迎し、灰羽は労働力としてもとてもいい働きをした。お金をもらってはいけないシステムは最初にフラとグリの街の街長が決めたことだった」



灰羽は高い年齢として生まれてくることができ、すぐにでも働くことができたのでみな喜んだ。ただこの二つの街以外では灰羽達は一般の人間と同じような扱いで扱われた」



すると話師は一旦一呼吸置くと、とても深刻そうに話し始めた。



「しかし当然灰羽の中に罪憑きは存在した。しかし罪憑きだからといって街の住人は差別をしなかった。灰羽はふたつの街をでた先でも歓迎され、人間と同じ扱いをされた」



「しかし、巣立ちの日を迎えてない、白羽になっていない灰羽が二つ以外の街に行くと奇妙な出来事が多発した。世話になった人が病気になったり、事故を起こしたり、家が火事になったりしたのだ。罪憑きはさらにひどかった」



「反面に、グリの街に滞って、ある日ふとフラの街に出向く灰羽がいた。それはフラの街に着くと羽が白くなっていて、光輪が外れ、天使のような風貌をしていた。しかし灰羽からあやかって白羽と呼ばれた」



「白羽は灰羽とは違い、とてもいい事が起こり、幸せの象徴とされた。しかし時に罪憑きであった灰羽が白羽になった場合は灰羽と同じ運命を辿ることになったのだ」



「そして、この二つの街から出て行った灰羽達の不吉な噂のせいで、グリの街の住人はひどく非難された。灰羽のせいで生活がめちゃくちゃだ。灰羽を閉じ込めろ、白羽になるまで街から出すなと」



「そしてフラの街の長は、灰羽が触れると熱を出す特殊な石で壁を作りグリの街を隔離した。街の住人は連帯責任ということでグリの街に閉じ込められた。そして灰羽が外では不吉な象徴という事がばれないように、先祖代々、幸福の象徴ということにした」



「そしてフラの街ででる利益と、グリの街で取れる鉱物との交易をトーガに託し、フラの街には白羽連盟が、グリの街には灰羽連盟が生まれた」



「もし、グリの街の住人が街からでて、外で灰羽の噂を聞いて、ここに戻ってきたらどうなる?灰羽の事実がこの街で広まったら灰羽は責め立てられるだろう。だから壁で隔離されているのだ」


「そして今いるグリの街の住人はフラの街に隔離された人々の末裔だ。だから灰羽について何も知らない。ただの言い伝えで幸福の象徴という嘘を信じられている。そしてそのおかげで無償の労働力である灰羽と街の住人の関係はとても良好なものなのだ。この事実を知っているのは、グリの街では我々灰羽連盟と、外からやってくるトーガだけなのである」

 

ネム灰羽と街の歴史を話師からきくとがっくりとうなだれた。灰羽とグリの街にそんな歴史があったとは。そして灰羽は不吉な象徴で、そのせいで隔離されていたとは。


「では、白羽になっても、罪憑きは隔離されるということですか?」


「いや、罪憑きであった白羽は、他にだれか保護者が必要になってくる。それは灰羽だったときに一番親しかったり、近くにいた存在だ。だからレキは最初がクラモリだったが、次にお前が保護者になったのだ」


「さあ、もういいだろう。もういけ、レキがお前を待っている。今のレキの保護者はお前だろう?お前がいなくてはレキは誰を頼ればいい?レキが自分を見失わないよう、しっかりと管理を頼む」



話師はそういうと、部屋から出て行って、グリの街に戻って行った。ネムも部屋から出てフラの街に戻った。全てを知ってしまったネムは自分にのしかかっている責任とプレッシャーにかなり疲弊していた。