#6 新しい白羽 シルバーホーム あらたな生活

こうしてフラの街にも冬を終え、春がやってきた。外は暖かくなっており、羽袋はもう必要なく外出ができた。



そしてある日、レキとクラモリの住居に一通の手紙が届いた。そこにはこう記されていた。



「クラモリ、レキへ

新たに壁を超えた灰羽が来られたし、ただ今、白羽連盟で保護中。至急、寺院まで来られたし 白羽連盟」



レキはそれを読むと慌ててクラモリの元へ飛んでいった。すぐにでもこの事実を伝えたかった。


 

「クラモリ!!」



「まあどうしたの?レキ、そんなに慌てて」



「連盟から手紙がきたんだ!新しく壁を越えきた灰羽が今連盟にいるんだって!きっとオールドホームの灰羽だよ!すぐに行こう!」



レキは新しい仲間が再び壁を越えた事実を知って興奮を隠せずにはいられなかった。次は誰がきたんだろう?ネムだろうか?それともカナ?ヒカリ?とにかくレキはすぐにでも確認したくてたまらなかった。


「まあまあ、レキ、そんなに慌てないで。クウもきっと会いたがってるからクウも誘って三人で行きましょう」



「もう来てるよー!」



外から元気のいい声がして来た。



「レキー!クラモリー!あたしのところにも手紙が来てたよー。お陰で今日急遽仕事の休みもらえたよ!レキも今日仕事休みでしょ?すぐに行こうよー」



そとからクウの声が聞こえてくる。レキはそうとう大きな声で話していたので、聞こえていたのだ。そして三人は準備をしてすぐに連盟へと向かった。



連盟につくと、トーガとの交渉そっちのけで、クウとレキは寺院の中まですっ飛んで言った。クラモリはあとを追うようにゆっくりと向かった。二人と違って、嬉しさの中にどこさ寂しげのある表情を浮かべていた。


「というわけでネム、あなたの灰羽歴は9年でしたね。ではこちらの手帳を差し上げます。9年間ご使用できますが、それ以降は更新しないと使えなくなってしまいますのでご注意ください。そしてこちらはお仕事が見つかるまでの手当となっております」



「ありがとうございます」



「住居については、この街にあなたと灰羽だったときに暮らしていた白羽が数名いますので、そちらにお住まいください。もし、職場での住まいをご希望でしたら、そのときはこちらまでご相談ください。今はあまり必要ないと思いますが」



トーガとネムがやり取りをしていると二人の白羽がすごい勢いで入ってきた。



「あ、ネムだ!」



「やっぱりネムだったか!きっとそうだとおもったんだ!」



「レキ、それにクウ!あなたたち、どうしてここに?」



ネムが驚いて二人を見ていると、トーガがネムに説明を始めた。



「ああ、レキ、それにクウ。よく来てくださいました。新しい白羽はこの通りネムです。クウは職場の空き部屋に暮らしていますが、今はレキはクラモリとシルバーホームに暮らされていますね。ネムもそちらをご希望ですか?」



「クラモリっ!?」



トーガの話を聞くとネムは驚きの表情を隠せなかった。クラモリがこの街にいる?そしてレキと一緒に住んでいる??



ネム・・・。」



二人に少し遅れてクラモリが寺院の中に入ってきた。ネムはクラモリを見るなり涙を浮かべ、クラモリに慌てて駆け寄った。



「クラモリ・・・。」



クラモリはネムを強く抱きしめると、二人は涙を流しあった。この場に言葉は必要なかった。ただただ再び再会できたことに心からの喜びを感じていた。



そして四人はレキとクラモリの住む住居へと帰っていった。ネムはレキと同様、レキやクウに会えることをすごく楽しみにしていたのだが、まさかクラモリにまでこんな早く会えるとは思わずに、ただ喜びに震えていた。



ネムも大きくなったね。最初見たときちょっと誰かわからなかった。また私はあなたに会えて嬉しい」



「私もクラモリに会えて嬉しい。クラモリ全然変わってなくて驚いた。クウにもまた会えたし、こんな嬉しいことはないよ」



「うん、あたしもまたネムがきてくれて嬉しい!カナもヒカリもラッカも早くこないかなー」



「そういえば、レキ、レキはここでクラモリと暮らしてるんでしょ?クウだけ別なの?」



ネムが不思議がって尋ねる。



「うん、あたしがきたときはこの街に白羽がいなかったから、連盟に灰羽だったときの経歴だけ話したらすぐにお店紹介してもらえたんだよ!オールドホームと違ってこんな綺麗な住処あったんだね。」



「もともと人間が住んでいた住処だったんだけど空き家になってたところにクラモリが住むことになったんでしょ?今はクラモリの名義で借りてるんだよね。それにしてもシルバーホームなんてさ、じーさんばーさんが住んでそうな名前でなんかやだね」



レキが呆れたようにそういうと、ネムは一つ気づいたことがあった。



「そういえばレキ、タバコもうやめたんだね。いつも食事中でも吸ってたから気づかなかった」



「ほんとだー、レキがタバコ吸ってない。なんかへんなの!ははは」



クウも一緒になって笑う。そんなこんなで楽しく話が繰り広げられていたが、クラモリは少し浮かない表情を浮かべていた。レキはそれにうっすら感づいていたが、このときは口に出さなかった。



それから何日かして、すぐにネムの職場が見つかった。またグリの街のときと同じ図書館司書の仕事だった。やはりもともと壁の中で働いていた情報が連盟に記録されているので、すぐに紹介がでて仕事に就くことができた。ネムは職場に住み込みで働くことを希望せず、レキとクラモリと三人で住むことを決めた。そしてまたあの三人一緒の同居生活が始まった。シルバーホームは、オールドホームほど広くはなかったけれど、裏に空き家が何件もあったため、何人でも住むことができた。クウは相変わらず職場に住み込みだったがよく遊びにきた。そしてて数日が経つと、クラモリの元に再び一通の手紙が届いた。