#4 カフェ 仕事 冬

「ついたーここだよー」



クウに案内され、着いたのは中央広場の近くにあった小さなカフェだった。グリの街にいた時、クウが働いていたカフェととてもよく似ていた。



「あたし、グリの街では2年しか働いてなかったけど、それが結構ここで役に立ってるんだ。今は接客メインだけどさ、マスターがいい人で料理も色々教えてくれるから仕事が楽しいんだ。オールドホームではレキが結構ご飯作ってくれたじゃん?レキもご飯屋さんで働くの向いてると思うんだけどな」



「まあ、そうだったの。レキ、料理上手だったんだね。今度あたしもレキに何か作ってもらおうかしら」



「うん、チビ共の世話と、オールドホームの家事全般やってたからね。まあ寮母のばーさんもいたし、カナとかヒカリも色々手伝ってくれたからさ」



レキにとって今はあの頃がとても懐かしく感じた。その後にラッカがやってきて人数が6人になってから、食卓がとても明るくなって、けれどそのあとクウが居なくなってって色々あったなと。



お店のドアを開けると、カウンターがあって、円形のテーブルがいくつか並んで居た。外にはテラスもいくつかあり、お洒落なカフェだった。



「おおーいらっしゃい、おや?クウ、今日は友達と一緒だね。一人はえーとたしかこないだ来てくれたクラモリさんだったかな?ん?もう一人は初めて見るね」



「あ、新生子です。レキっていいます。クウがいつもお世話になっています。よろしくお願いします」



「新生子?ああ、最近グリの街からきた新しい白羽ってことだね。いえいえ、こちらこそよくきてくれたね」



グリの街では、新しく繭から生まれた灰羽を新生子というが、こちらでは違うのか。ではなんというのだろう?



「こっちの街ではね、新生子って言葉はもう使わないの。特定の言葉はないから、新しくきた白羽って感じかな?」



クラモリがレキに詳しく説明してくれる。なるほど、たしかに新生子というのはおかしな表現だった。



「いやあ白羽が三人もきてくれるなんて嬉しいな。クウの知り合いっていうのも嬉しいし、じゃあさ、えーとレキさんだっけ?今日はクウが二人目の仲間を連れてきた祝いだ!タダにしておくから好きなもの食べていきなよ!」



「え?そんなの悪いです。あたし、お金もってますから払います」



クラモリが慌てて仲介に入る。前にあった汽車の車掌といい、この街も親切な人が多い。それも白羽だからだろうか?とレキは思った。



「いいっていいって、いつもクウがここで頑張ってくれてるからね。今日くらいは遠慮しないで」



「わーい、マスター!どうもありがとう!」



「あ、ありがとうございます」



レキとクラモリは慌てて頭を下げる。クウはこんな親切な人に雇われているのか。と少し羨ましくなった。



三人は席に着くと、クウがおススメの料理を頼んでくれた。それははグリの街の料理店で食べた料理と味も見た目もよく似ていた。



「クウはここで働いてるんだね。そういえばクラモリはどこで働いているの?」



「え、あ、あたしは今ちょっと休暇中なの」



「休暇中?やっぱり体の調子があんまりよくないの?大丈夫」



「え、あ、うん。大丈夫よ。体の調子じゃなくてね、今はちょっと休職しているの。仕事場はフラの街じゃないから、今は連盟から手当をもらって休んでいるの」



「この街で働いてないの?ということはここから汽車に乗って通っているの?」



「え、えーと、まあそんな遠いところじゃないんだけど、今は休暇しているの。色々事情があってね。また仕事場に戻る日がくるんだけど、今はわけあってね」



レキは、クラモリが何か自分に隠しているような気がしてならなかった。話している時、若干辛そうに下をむきながら話していたし、なにか後ろめたさのようなものがあったのがわかった。



「まーいいじゃんレキ!あたしもクラモリがいてくれて心強いしさ、さー食べよ!」


レキは何か自分の中で引っかかるものがあったが、今はクウもいることだし、聞くのをやめておいた。そして三人で食事を楽しんだ。グリの街で、クラモリが巣立ちをして以来、初めての一緒の食事だった。



「マスター!ご馳走さま!どうもありがとう!」



クウが元気よくマスターに挨拶をする。マスターも嬉しそうだった。



「こちらこそ、よくきてくれたね。またいつでもおいでよ」



「どうもご馳走さまでした。また来させていただきます。よろしくおねがいします」



クラモリが丁寧にお礼を言うとレキもそれに続いた。こちらの街にきてから三人でする食事はとても楽しいものだった。



「あたし、このお店の二階に住み込みで住んでるんだ、ほら!」



そういってクウが指を指すと、外にある二階に続く階段の先にある扉の手前の表札に一本の白い羽が刺さっていた。自分が起きた家と同じだった。あれが白羽の住んでる証なのか?



そしてその後、クウが街を案内し、三人で色々と回った。本当はクラモリの方がこの街にいた期間が長いのだが、クウが張り切ってレキを案内するものだから、クラモリは静かに見守って居た。


そして、1日街を回ると、夕方になったので、クウは自分の住処に帰っていった。



「クウ、今日は色々とありがとう。お昼もご馳走になっちゃって。また食べにくるよ」



「こちらこそありがとう!またレキに会えて嬉しい!あたしもあの家に遊びに行くね!」



そして日が落ちて、夕方になると、レキはクラモリと一緒に、あのレキが目覚めた家に戻っていった。そうか、自分が巣立ったのは冬だったから日が落ちるのも早かった。寒さに震えるレキにクラモリはそっと手を握った。



「レキ、今日は楽しかったね。色々とありがとう」



クラモリがそう言うと、レキは彼女の手の暖かさに感動していた。そしてこの幸せがずっと続くものだとこの時は信じてやまなかった。