#24 ラッカと話師 本来の姿 クウとカナ

シルバーホームを飛び出したラッカ。一目散に白羽連盟の寺院に向かう。夜遅くにカナの使っていた自転車があったが、カナがいなかったので借りることができず、走って行くことにした。

寺院につくと、夜遅くだったが、そこにはトーガがいた。トーガはラッカをみて驚いた。こんな夜遅くに一体どうしたのだろう?


「ああ、ラッカ。つい先ほど夜便で送らせていただきましたがもう届いたのですか?実はまだこちらには」


「すみません!トーガ!私、灰羽連盟の話師に今すぐ会いたいんです!」


トーガが何かいいかけたが、息を切らせたラッカがすごい剣幕で迫ってくる。トーガは圧倒され、こちらの言うことを話す前にラッカに遮られてしまった

ラッカは事情を説明すると、まだこの時間でも話師に会うことはできるか交渉した。トーガはラッカのその様子を見て、何が何だかわからないうちに許可を出した


「もう夜分も遅いので、なかなか厳しいかと思いますが、まだギリギリこちらに呼ぶことは可能だと思います。では案内します。」


トーガはそう言ってラッカをネムの時と同じようにグリの街まで案内した。壁が見えてくるとラッカはとても懐かしい気持ちになってきた。


門の前までくると、トーガは門を叩き、ネムの時と同じように小部屋に案内した。そしてそのルールや経緯をラッカに説明した。

「壁の中ではさわれば罰を受けましたが、こちらでは大丈夫ですよ。では話師を呼んできますね」


「ありがとうございます。」


ラッカはぺこりとお礼をすると、その小部屋に座って話師を待った。一定時間待つと、そこに話師が現れ、ラッカにこう言った


「ラッカ、よくここまできた。ネム以外でここにこれた白羽は、お前だけだ。こんな夜遅くにくるとは、一体どうしたのだ?」


「お久しぶりです。話師のおじいさん、実は」


「言わずともわかる。レキのことだろう?だが、お前はもう答えを知っているはずだ。」


「え?それは一体どう言うことですか?」


ラッカは話師のそう言われ、少々戸惑ってしまった。話師は自分の心を見抜いていると言うのか?自分ですら気づくことのない、自分の中にある真相に


「残念だが、私がお前に教えてやれることは何一つない。答えは自分で見つけるものだ。」


「えと、その」


ラッカは話師の話が理解できなかった。もう自分は答えを知っている?そしてそれを教えることはない?一体どう言うことなのだろう?


「しかし、ここに来たからには私もお前に何も教えずに行くわけには行くまい。さて、何が聞きたい。話してごらんなさい。」


話師がそう言うと、ラッカは今まであったことやネムのこと、レキがどうしたら元に戻るか、それを聞きにくる話をした。そして話師はそれに対してただひたすら頷いて話を聞いていた


「ラッカ、壁の中のルールや灰羽の存在、そしてグリの街のことはネムから聞いているな。あとは私に教えられることはない。しかし一つだけ教えよう。レキは自分の本来の姿に再び戻ろうとしているのだ。」


「本来の姿!?」


話師がそう言うと部屋にある時計を見て時刻を確認した。もう11時を回っていた。


「いかん、もう過ぎ越しの日ももうあと一時間を切った。さて、私の教えられることはここまでだ。もうこれ以上言わなくてもわかるだろう?すぐに戻りなさい!」


話師はそう言うと慌ててラッカを部屋から追い出した。部屋から出たラッカはなにかを悟ったようにシルバーホームまで走り出した。同時に何かおおいなる不安を抱えていた


「レキ、レキ!」


自分のきた道を一心不乱に走って帰るラッカ。とにかく一刻でも早く帰りたかった

 

「まーたっくさ、こんな時間に呼び寄せるなんて、連盟もどうかしてるよ。明日でいいじゃんね。」


「ダメだよ!明日じゃもう年が明けちゃうじゃん!やっぱり今日じゃなきゃ」


カナがクウを自転車の後ろに乗せ、二人乗りをして連盟まで向かっていた。カナは不平不満がたらたらだったがそこはクウに説得され、向かうことにしたのだ


「って、あそこにラッカがいるよ!おーいラッカ!」


連盟のすぐ近くまできた時に、クウがラッカに気づき、声をかけ手を振った。ラッカは何かに取り憑かれたようにひっしに走っていて、二人に気づかなかった。


「えと、ラッカなんかすげー急いでるね。」


カナがそう言うと、二人は連盟までついて自転車を降り、寺院の中に入っていった。


「ふいー、やっと着いたね。帰りはクウが漕いでよ。」


「うん、いいよ。けどカナが漕いだ方が早いとおもう。あたしはカナほどは早く漕げないから」


そんなこんなで寺院に入るふたり、トーガは二人を招き入れ、奥へと案内した。