#3 クウ 白羽連盟 トーガ

「クウ!」



レキは声を張り上げてクウの名前を呼ぶ。猫と遊んでいたクウはその手を止め、自分の名前を呼んだ方に目を向けた。



「レキ、ひっさしぶりー!」



クウは満面の笑顔で手を高々と上げ、そう返事をした。クウ、クラモリと同じで何も変わってない。全て壁の中と同じ。


レキは嬉しさのあまり、急いでクウに駆け寄り抱きついた。クウ、クウ、同じオールドホームの仲間。クラモリに続いて、巣立ちをしてから再び会うことができるなんて、まるで夢のようだった。



「レキ、レキが一番最初に来てくれたんだね。あたし、早くみんなが来ないかなって少し不安だったから来てくれて嬉しいよ」



「あたしもクウに会えて嬉しい。よかった。ちゃんと壁の外でもまた会えたね。元気だった?」



「うん、元気だよ!早くみんな来ないかなってずっと楽しみにしてた!」



「そうか。クウも不安だったんだね。こっちもさ、クウがいなくなってからみんな凄くショックでさ。あたしが巣立ちの日の説明をしてもカナなんか怒り出すし、ラッカなんか一番落ち込んでて泣き出しちゃったりしたんだよ」



「そっかあ。あたし、みんなにちゃんとお別れ言わなかった。だってみんなすぐに来ると思ったから。だけどラッカには、ラッカにだけは最後少しだけお別れみたいなものを言えた気がするんだよね。あたしもラッカに早く会いたいな」



「あ、そういえばレキ、まだ仕事決まってないでしょ?けど手帳はもうもらったの?」



「ああ、実はついさっき起きたばかりでまだ連盟にも行ってないんだ」



「そうだよね。じゃあさ、まずは連盟に行こうよ。あたしが連盟まで案内してあげる。そのあとさ、あたしの働いてるお店があるからそこでご飯食べようよ!クラモリも誘ってさ」



「あ、ああうん。あのさ、クラモリから聞いたんだけど、クウが眠っているあたしをあそこの家まで運んでくれたの?」



「運んだのはあたしじゃないよ!トーガだよ!レキが来たって知らせを連盟から聞いたからすぐにクラモリの家に運んでほしいってあたし言ったんだ。クラモリが一番レキに会いたがってたからね!」



「そう。クウ、色々とありがとう」



レキは、自分がなぜ壁を越えてからの記憶がなく、眠りについたのかがわからなかった。それだけが何か引っかかっていたが、クラモリもクウもその事について特に知っていることはなさそうだった。


そうしてレキはクウに連れられて連盟のある場所にまで行った。グリの街と違って、途中で滝や川がなかったため、わりとすぐに連盟の寺院についた。



この街の寺院も灰羽連盟の寺院と同じで石造りの筒状の建物だった。しかし前と違い、建物の背に岩山はなく、一つの塔のようにそびえ立っていた。


「ここが、寺院・・・。」



そして寺院の入り口には、こう表記されている看板があった。



『異種族管理事務局 白羽連盟』



寺院の中に二人で入ると、中にトーガがいた。トーガ、やはりこちらの街の人間だったか。そして次の瞬間、驚くべきことに、こう言った。



「ああ、オールドホームの元灰羽ですね。こないだ壁を越えてやってきたばかりの白羽ですね。手帳をもらいに来たのですね。ささ、こちらへどうぞ」



トーガが喋った??



グリの街では、街の住人ですら話すことや触ることは不可能だったはずのトーガ。しかし言葉を発したのだ。



「はい、その度はお世話になりました!あたし、付き添いできました。クウです!」



「え、ちょっと、クウ!話して大丈夫なの?」



「うん、問題ないよ。こっちでは壁の中とルールが違うからね。白羽は壁の外では普通の人間と変わらない扱いだし、トーガもここの管理の人って言うだけで街の人とも普通に交流してるよ」



そうか、街の様子が壁の中と似ていたから気づかなかったが、自分はもう灰羽ではないし、ここは壁の外で独自のルールがあるのか。



そしてトーガについていき、寺院の中庭に入ると、レキは手帳を渡された。そしてそこには『白羽連盟』という文字が記載されていた。



「レキ、あなたの灰羽歴は7年でしたね。7年間、壁の中でご苦労様です。こちらの手帳は7年間無償で使用できますので、期間が切れたら更新をお願いします」



「え?どういうことですか?」



「はい、グリの街で灰羽としての期間が壁の外での保証の期間となっております。クウは2年でしたね。レキは7年となっています。もし期間がきれましたら更新の手続きをしないと使用ができなくなってしまうのでご注意ください」



「そ、そうなんですか。ありがとうございます」



そういって、レキは手帳を受け取ると、街に戻っていった。あの何も話さない交易のために街にきていたトーガがあんな口調で話すとは。レキは驚いていた。



「トーガって意外と親切でしょ。壁の中だとなんか怖いイメージあったけど、こっちだとなぜかあたしたちに優しいんだよね」



「あ、ああ。そうだね。ちょっと驚いた」



レキはトーガにもクウにも色々と尋ねたいことがあったのだがやめておいた。なにか聞いてはならないような気もしたし、時間が経てばいずれわかるだろうと思い、胸にしまいこんで後にした。


そしてレキは再びクラモリのいる家に戻ると、クラモリを連れ出して、三人で街へ向かった。クウの働いているお店に三人で食事をしにいく約束だった。



壁を超えてから、クラモリに会え、そしてクウにも会えたことで、レキは心の底から幸福を感じていた。この街についてから色々不明な部分もあったが、この時レキはただただ幸せの中にいた。

 

#4 カフェ 仕事 冬

「ついたーここだよー」



クウに案内され、着いたのは中央広場の近くにあった小さなカフェだった。グリの街にいた時、クウが働いていたカフェととてもよく似ていた。



「あたし、グリの街では2年しか働いてなかったけど、それが結構ここで役に立ってるんだ。今は接客メインだけどさ、マスターがいい人で料理も色々教えてくれるから仕事が楽しいんだ。オールドホームではレキが結構ご飯作ってくれたじゃん?レキもご飯屋さんで働くの向いてると思うんだけどな」



「まあ、そうだったの。レキ、料理上手だったんだね。今度あたしもレキに何か作ってもらおうかしら」



「うん、チビ共の世話と、オールドホームの家事全般やってたからね。まあ寮母のばーさんもいたし、カナとかヒカリも色々手伝ってくれたからさ」



レキにとって今はあの頃がとても懐かしく感じた。その後にラッカがやってきて人数が6人になってから、食卓がとても明るくなって、けれどそのあとクウが居なくなってって色々あったなと。



お店のドアを開けると、カウンターがあって、円形のテーブルがいくつか並んで居た。外にはテラスもいくつかあり、お洒落なカフェだった。



「おおーいらっしゃい、おや?クウ、今日は友達と一緒だね。一人はえーとたしかこないだ来てくれたクラモリさんだったかな?ん?もう一人は初めて見るね」



「あ、新生子です。レキっていいます。クウがいつもお世話になっています。よろしくお願いします」



「新生子?ああ、最近グリの街からきた新しい白羽ってことだね。いえいえ、こちらこそよくきてくれたね」



グリの街では、新しく繭から生まれた灰羽を新生子というが、こちらでは違うのか。ではなんというのだろう?



「こっちの街ではね、新生子って言葉はもう使わないの。特定の言葉はないから、新しくきた白羽って感じかな?」



クラモリがレキに詳しく説明してくれる。なるほど、たしかに新生子というのはおかしな表現だった。



「いやあ白羽が三人もきてくれるなんて嬉しいな。クウの知り合いっていうのも嬉しいし、じゃあさ、えーとレキさんだっけ?今日はクウが二人目の仲間を連れてきた祝いだ!タダにしておくから好きなもの食べていきなよ!」



「え?そんなの悪いです。あたし、お金もってますから払います」



クラモリが慌てて仲介に入る。前にあった汽車の車掌といい、この街も親切な人が多い。それも白羽だからだろうか?とレキは思った。



「いいっていいって、いつもクウがここで頑張ってくれてるからね。今日くらいは遠慮しないで」



「わーい、マスター!どうもありがとう!」



「あ、ありがとうございます」



レキとクラモリは慌てて頭を下げる。クウはこんな親切な人に雇われているのか。と少し羨ましくなった。



三人は席に着くと、クウがおススメの料理を頼んでくれた。それははグリの街の料理店で食べた料理と味も見た目もよく似ていた。



「クウはここで働いてるんだね。そういえばクラモリはどこで働いているの?」



「え、あ、あたしは今ちょっと休暇中なの」



「休暇中?やっぱり体の調子があんまりよくないの?大丈夫」



「え、あ、うん。大丈夫よ。体の調子じゃなくてね、今はちょっと休職しているの。仕事場はフラの街じゃないから、今は連盟から手当をもらって休んでいるの」



「この街で働いてないの?ということはここから汽車に乗って通っているの?」



「え、えーと、まあそんな遠いところじゃないんだけど、今は休暇しているの。色々事情があってね。また仕事場に戻る日がくるんだけど、今はわけあってね」



レキは、クラモリが何か自分に隠しているような気がしてならなかった。話している時、若干辛そうに下をむきながら話していたし、なにか後ろめたさのようなものがあったのがわかった。



「まーいいじゃんレキ!あたしもクラモリがいてくれて心強いしさ、さー食べよ!」


レキは何か自分の中で引っかかるものがあったが、今はクウもいることだし、聞くのをやめておいた。そして三人で食事を楽しんだ。グリの街で、クラモリが巣立ちをして以来、初めての一緒の食事だった。



「マスター!ご馳走さま!どうもありがとう!」



クウが元気よくマスターに挨拶をする。マスターも嬉しそうだった。



「こちらこそ、よくきてくれたね。またいつでもおいでよ」



「どうもご馳走さまでした。また来させていただきます。よろしくおねがいします」



クラモリが丁寧にお礼を言うとレキもそれに続いた。こちらの街にきてから三人でする食事はとても楽しいものだった。



「あたし、このお店の二階に住み込みで住んでるんだ、ほら!」



そういってクウが指を指すと、外にある二階に続く階段の先にある扉の手前の表札に一本の白い羽が刺さっていた。自分が起きた家と同じだった。あれが白羽の住んでる証なのか?



そしてその後、クウが街を案内し、三人で色々と回った。本当はクラモリの方がこの街にいた期間が長いのだが、クウが張り切ってレキを案内するものだから、クラモリは静かに見守って居た。


そして、1日街を回ると、夕方になったので、クウは自分の住処に帰っていった。



「クウ、今日は色々とありがとう。お昼もご馳走になっちゃって。また食べにくるよ」



「こちらこそありがとう!またレキに会えて嬉しい!あたしもあの家に遊びに行くね!」



そして日が落ちて、夕方になると、レキはクラモリと一緒に、あのレキが目覚めた家に戻っていった。そうか、自分が巣立ったのは冬だったから日が落ちるのも早かった。寒さに震えるレキにクラモリはそっと手を握った。



「レキ、今日は楽しかったね。色々とありがとう」



クラモリがそう言うと、レキは彼女の手の暖かさに感動していた。そしてこの幸せがずっと続くものだとこの時は信じてやまなかった。

#5 白羽の規則 保護者 そして春

家につくと、その日1日、色々なことがあって、レキは気疲れしたのかすぐに眠りについた。今いる部屋が自分の部屋なのか?そこは使っていいのかなどの疑問はもちろんあったが、クラモリがそばにいる安堵がレキをすぐに眠りへと誘った。

 

次の日、レキが目覚めると部屋のテーブルにはパンやサラダが並べられていた。


 

 

「あ、レキ、もう起きたの。よかった。ぐっすり眠っていたからまだ起きないかと思ってた」

 


 

ああ、そうだった。もうここはオールドホームではなく、壁の外だったか。1日経ってもレキはまだ自分が壁の外にいる感覚を掴めなかった。


 

 

「レキ、今コーヒーいれるね。あなたも飲む?」

 

 

「あ、ああ。もちろん。コーヒーは大好きだよ。クラモリ、ありがとう」


 

 

オールドホームでは自分がよく入れていたコーヒーをクラモリが今は入れてくれた。落ち着いたこの空間の幸せのひとときだった。そういえば、ミドリに言われてからか?もうレキはタバコを吸っていなかったが、自分でもそのことに気づいていなかった。

 

 

「そういえばレキ、昨日はクウと一緒に連盟に手帳をもらいにいったんでしょう?手当は貰えたの?」

 

 

「手当?手当ってなんのこと?」

 

 

「ああ、やっぱりもらってなかったのね。レキはまだこの街に来たばかりで仕事をしてないでしょう?灰羽だったときに働いていた分の手当よ。まあ、もうグリの街で働いていないから、壁の外で仕事が見つかるまでにもらえるお金のことね」

 

 

そうか、ここではもう手帳のページではなく実際にお金をもらって生活できるのだった。レキはすっかりそのことを忘れていた。



「私も聞きたいことがあるから今日、もう一回連盟に一緒に行きましょう。また手続きがあるかもしれないから」

 

 

クラモリがそう言うと、二人は朝食を済ませ、すぐさま連盟へと向かった。連盟に着くと、トーガが入り口におり、招き入れてくれた

 


 

「ああ、クラモリ、それにレキ。よく来てくれましたね。どうされました?」

 

 

「あの、レキの分の手当はどうなっているのでしょうか?」

 

 

「ああ、そういえばレキはまだ手当を申請していませんでしたね。こないだは手帳だけをとりにきましたね。一緒にいたのがクラモリではなく、クウだったので、クラモリに何か事情があって、まだ来れないのかと思っていました」

 

 

トーガが何かクラモリに事情を説明していたが、レキは理解できなかった。手当をもらう際に、なぜクラモリの申請が必要なのだろう?クウは付き添いで来ただけだったのに。

 


 

そしてなにやらクラモリとトーガが話し合っていて、クラモリがトーガから封筒のようなものを受けといっていた。中には紙幣と貨幣が入っているようで、受け取る際に、小さな金属音が聞こえた

 

 

「では、以上で申請は終了です。わざわざお越しいただいてすみません。また何かあればご相談ください」

 


 

トーガがそう言うと、クラモリはレキを連れてまたあの家まで帰っていった。しかしレキにとっては不可解な点が多く、まだ色々と聞きたいことが山ほどあった。

 

「クラモリ、あたしはまだここに来てばかりだから、街のことや白羽のことは全然わからないんだけど、なにかあたしに隠していない?もう隠し事はやめてほしい。あたし、壁の中でもクラモリが居なくなってとっても辛かった。だから本当のこと、話してほしい」

 

 

「レキ、ごめんね、色々レキにはわからないことがあるよね。だから私、ちゃんとレキに話そうと思う」


 

 

そう言うとクラモリは重い口を開き、レキに話し始めた。

 


 

「まずはじめに、私はこの街で仕事をしていないの。ここから汽車で少し離れた街で暮らしているのよ。今は一時的にフラの街に戻って来ているから、休暇手当で暮らしているの」

 

 

クラモリからそう言われると、レキは汽車の車掌に言われたことを思い出した。そういえば白羽がこの街にいるのは珍しいと、そして一時的に戻って来ただけかい?と聞かれたことも。

 

 

「このフラの街はね、巣立ちを迎えた灰羽が、外の世界での最初の街として生活する場なんだけど、一定期間を過ごすと違う場所に行かなくてはならない決まりなの。」

 

 

「え?それはどういうこと?」

 

 

「例えば白羽がこの街で暮らし続けることになれば、街は白羽でたくさんになってしまうでしょ?そうすると白羽への手当が多く支払われたり、新しい白羽が来ると住処を提供しなくてはならなくなるし、それに」

 

 

「それに?」

 

 

「なによりもグリの街にはもう戻れないし、壁に触ると罰を受けたでしょう?それと同じで、白羽になっても私たちはもう壁に近づいてはいけないことになっているの」

 

 

そうか。それでこの街に白羽がいるのが珍しいことだったのか。

 

 

「けど、クラモリはいつまでこの街にいるの?いつまでいていいことになってるの?」


 

 

「私たちは、期間や日数でここにいられるわけじゃないの。壁の中と同じで、巣立ちの日が来たらそこから旅立つ日がくるのよ」

 

 

「レキが巣立ちを迎えたっていう知らせを聞いて、私は慌ててこの街に戻ってきた。私は誰よりもあなたに一番に会いたかった。そしてクウに出会って色んなことを聞いたわ。レキが元気だって言う話をきけて嬉しかった。そしてトーガも、もしレキが目覚めたらよろしくお願いしますってレキをここまで運んでくれた」

 

 

クラモリはそう言うと、突然立ち上がって窓の外を眺めた。そういえば昨日は晴れていたが、今日はどうも空が曇っていて、暗い感じだった。

 

 

「そしてね、レキ、あなたは罪憑きだった。だけど私はあなたを残して壁の外へ巣立ってしまった。罪憑きだった灰羽は、白羽になっても誰かの保護下にいなければいけない。だから連盟は巣立ったレキを眠らせて保護者が現れるのを待った。そこでクウが1番に連絡を受けていたから私を指名してくれたの」

 

 

そうだったのか。だから巣立ってからの記憶がなかったのか。

 

 

「じゃ、じゃあさ、クラモリは前の時みたいにもういなくなったりしないんだね?たとえ自分のいた街に戻ったとしても、また絶対に会えるよね?」

 

 

「もちろんよ、レキ。もう寂しい想いはあなたにさせないから」

 

 

クラモリから一部始終を聞くと、レキは本当に安心した。色々あった胸のつかえがとれた気がした。クラモリはもういなくならない。そしていつかは自分のいる街にもどるけど、今はここにいる。それだけ聞くと、もうレキに不安の気持ちはほとんどなくなっていた。

 

 

それからレキは、クラモリと同じ家で生活を始めた。運良くすぐに仕事は見つかった。前の街では子供達の面倒を見る仕事だったが、今度は家政婦で家事の仕事だった。街の大きなお屋敷に勤め、主人はとても親切だった。レキにとって、毎日がとても新鮮で、もう悩むことはなにもなかった。クラモリとクウとの三人で過ごす新しい街の暮らしは幸せそのものだった。そうしてあっという間に時はたち、冬が終わり春がやってきた。

#6 新しい白羽 シルバーホーム あらたな生活

こうしてフラの街にも冬を終え、春がやってきた。外は暖かくなっており、羽袋はもう必要なく外出ができた。



そしてある日、レキとクラモリの住居に一通の手紙が届いた。そこにはこう記されていた。



「クラモリ、レキへ

新たに壁を超えた灰羽が来られたし、ただ今、白羽連盟で保護中。至急、寺院まで来られたし 白羽連盟」



レキはそれを読むと慌ててクラモリの元へ飛んでいった。すぐにでもこの事実を伝えたかった。


 

「クラモリ!!」



「まあどうしたの?レキ、そんなに慌てて」



「連盟から手紙がきたんだ!新しく壁を越えきた灰羽が今連盟にいるんだって!きっとオールドホームの灰羽だよ!すぐに行こう!」



レキは新しい仲間が再び壁を越えた事実を知って興奮を隠せずにはいられなかった。次は誰がきたんだろう?ネムだろうか?それともカナ?ヒカリ?とにかくレキはすぐにでも確認したくてたまらなかった。


「まあまあ、レキ、そんなに慌てないで。クウもきっと会いたがってるからクウも誘って三人で行きましょう」



「もう来てるよー!」



外から元気のいい声がして来た。



「レキー!クラモリー!あたしのところにも手紙が来てたよー。お陰で今日急遽仕事の休みもらえたよ!レキも今日仕事休みでしょ?すぐに行こうよー」



そとからクウの声が聞こえてくる。レキはそうとう大きな声で話していたので、聞こえていたのだ。そして三人は準備をしてすぐに連盟へと向かった。



連盟につくと、トーガとの交渉そっちのけで、クウとレキは寺院の中まですっ飛んで言った。クラモリはあとを追うようにゆっくりと向かった。二人と違って、嬉しさの中にどこさ寂しげのある表情を浮かべていた。


「というわけでネム、あなたの灰羽歴は9年でしたね。ではこちらの手帳を差し上げます。9年間ご使用できますが、それ以降は更新しないと使えなくなってしまいますのでご注意ください。そしてこちらはお仕事が見つかるまでの手当となっております」



「ありがとうございます」



「住居については、この街にあなたと灰羽だったときに暮らしていた白羽が数名いますので、そちらにお住まいください。もし、職場での住まいをご希望でしたら、そのときはこちらまでご相談ください。今はあまり必要ないと思いますが」



トーガとネムがやり取りをしていると二人の白羽がすごい勢いで入ってきた。



「あ、ネムだ!」



「やっぱりネムだったか!きっとそうだとおもったんだ!」



「レキ、それにクウ!あなたたち、どうしてここに?」



ネムが驚いて二人を見ていると、トーガがネムに説明を始めた。



「ああ、レキ、それにクウ。よく来てくださいました。新しい白羽はこの通りネムです。クウは職場の空き部屋に暮らしていますが、今はレキはクラモリとシルバーホームに暮らされていますね。ネムもそちらをご希望ですか?」



「クラモリっ!?」



トーガの話を聞くとネムは驚きの表情を隠せなかった。クラモリがこの街にいる?そしてレキと一緒に住んでいる??



ネム・・・。」



二人に少し遅れてクラモリが寺院の中に入ってきた。ネムはクラモリを見るなり涙を浮かべ、クラモリに慌てて駆け寄った。



「クラモリ・・・。」



クラモリはネムを強く抱きしめると、二人は涙を流しあった。この場に言葉は必要なかった。ただただ再び再会できたことに心からの喜びを感じていた。



そして四人はレキとクラモリの住む住居へと帰っていった。ネムはレキと同様、レキやクウに会えることをすごく楽しみにしていたのだが、まさかクラモリにまでこんな早く会えるとは思わずに、ただ喜びに震えていた。



ネムも大きくなったね。最初見たときちょっと誰かわからなかった。また私はあなたに会えて嬉しい」



「私もクラモリに会えて嬉しい。クラモリ全然変わってなくて驚いた。クウにもまた会えたし、こんな嬉しいことはないよ」



「うん、あたしもまたネムがきてくれて嬉しい!カナもヒカリもラッカも早くこないかなー」



「そういえば、レキ、レキはここでクラモリと暮らしてるんでしょ?クウだけ別なの?」



ネムが不思議がって尋ねる。



「うん、あたしがきたときはこの街に白羽がいなかったから、連盟に灰羽だったときの経歴だけ話したらすぐにお店紹介してもらえたんだよ!オールドホームと違ってこんな綺麗な住処あったんだね。」



「もともと人間が住んでいた住処だったんだけど空き家になってたところにクラモリが住むことになったんでしょ?今はクラモリの名義で借りてるんだよね。それにしてもシルバーホームなんてさ、じーさんばーさんが住んでそうな名前でなんかやだね」



レキが呆れたようにそういうと、ネムは一つ気づいたことがあった。



「そういえばレキ、タバコもうやめたんだね。いつも食事中でも吸ってたから気づかなかった」



「ほんとだー、レキがタバコ吸ってない。なんかへんなの!ははは」



クウも一緒になって笑う。そんなこんなで楽しく話が繰り広げられていたが、クラモリは少し浮かない表情を浮かべていた。レキはそれにうっすら感づいていたが、このときは口に出さなかった。



それから何日かして、すぐにネムの職場が見つかった。またグリの街のときと同じ図書館司書の仕事だった。やはりもともと壁の中で働いていた情報が連盟に記録されているので、すぐに紹介がでて仕事に就くことができた。ネムは職場に住み込みで働くことを希望せず、レキとクラモリと三人で住むことを決めた。そしてまたあの三人一緒の同居生活が始まった。シルバーホームは、オールドホームほど広くはなかったけれど、裏に空き家が何件もあったため、何人でも住むことができた。クウは相変わらず職場に住み込みだったがよく遊びにきた。そしてて数日が経つと、クラモリの元に再び一通の手紙が届いた。

#7 契約 巣立ち 規則

クラモリは手紙を手にすると、恐る恐る開封した。そしてそこにはこう記されてあった。



「クラモリへ 本日夕方の5時までに寺院まで来られたし。もし姿を表さない場合は強制退去を命じる 白羽連盟」



クラモリはその手紙の読むと、じんわりと涙を浮かべ、肩を落とした。



「ああ、とうとうこの最後通知がきてしまった。私は今日、もうここの街を出て行かなくてはならない」



クラモリはそういうと、すぐに寺院まで向かった。朝ごはんを作っていたレキがクラモリの姿が見えず不審に思い、周囲を探したが姿が見当たらない。



ネムネム、ちょっと起きて」



レキは慌ててネムを起こし、現状を伝えた。クラモリが見当たらないのだが、朝ごはんも食べずにどこに行ったのだろう?



ネムも慌てて起きてクラモリを探す。シルバーホームにはどこにも姿がない。



「本日中なのですか?どうしても今日中に出て行かなくてはなりませんか?」



「はい、最初にそういう契約であの住居にあなたは住まれていましたよね?残念ですがこれは規則ですのでお願いいたします」



「けど、ネムはまだ来て日が浅いですし、何よりレキは私がいなくなったらきっと困惑すると思います」



「クラモリ、それはレキの問題であってあなたの問題ではありません。それはレキが乗り越えることです」



トーガと寺院の中で懸命に交渉をするクラモリ。どうにかしてこの街から巣立つ日数を増やせないだろうかと真摯に願っていた。



「クラモリ、あの住居は本来レキの白羽手帳の保証で暮らせています。本来はレキの住処です。ただレキは罪憑きだったので、あたなの保護下という契約で無償化していました。休暇手当も同じです。契約はネムが来るまでの約束でしたよね。もうあの住居はネムが契約者となるのであなたをここにとどめておくことはできません」



「わかりました。では本日5時までですね。支度をして汽車で街から出て行く準備を致します」



「よろしくお願いいたします。これも規則ですので」



クラモリはトーガとの交渉の末、やはり日数を伸ばせないことを知るととぼとぼとシルバーホームに帰ってきた。白羽連盟には、ネムがきてレキの保護者になるまでの契約ということで街に暮らせたのだった。



シルバーホームに戻ると、クラモリは入り口に刺さっていた白い一本の羽を引き抜いた。今日からここは自分の契約ではなく、ネムの契約になる。経緯を話して、ネムに新しく引き継いでもらわなくては。



部屋に戻ると、朝ごはんのパンやサラダとスープが置かれていた。どうやらレキとネムは仕事に向かったらしく、自分の分の朝食を用意してくれていたのだ。



「レキ・・・。ネム・・・。」



クラモリは両手で顔を覆うと涙を流して崩れ落ちた。とうとうこの日がきてしまった。しかし、自分のいた街に戻らなくてはならない。もともといた街にも自分を待ってくれている人がいたのだ。



そして1日が終わり、夕方になると、レキとネムが帰宅した。クラモリは重苦しい雰囲気の中、二人に事実を告げた。いつか来るとは思っていたが、レキはその事実を聞くとショックを隠せなかった。



「け、けどさ、また会えるんだよね?またこの街に戻って来れるんだよね?」



「ごめんなさいレキ、もうこの街に戻ってくる理由がない限り、私はもう戻れない。ネムがくるまでの約束で連盟に取り次いでもらってたから。私は私のいた街にもどらなくてはいけないの」



「クラモリの住んでいる街ってここから遠いの?すぐでしょ?」



「ここから、汽車と船を乗り継いで二日はかかるわ。けど、レキとネムはまだこの街の仕事の契約があるからこの街からまだ巣立つことはできないのよ。レキ、ネム、ごめんね。私はもうすこしあなた達と一緒にいたかった」



そしてクラモリは身支度をし、シルバーホームの入り口にネムの白羽を刺すよう指示した。そしてとうとう、汽車の夕方の最終便の時間になり、二人はクウを誘い見送りに行った。



「クラモリ、まったねー!」



クウはとても元気にクラモリを見送ったが、ネムは涙を流して見送った。レキは表情一つ崩さず見送っていた。そしてクラモリは汽車に乗って街から旅立ってしまった。



クラモリがいなくなってから、また灰羽だった頃の、レキとネムの二人だけの同居生活が始まった。クウは気を使ってよく家に遊びに来て二人を元気付けた。ネムは悲しみに暮れていたが、内心ではレキに心配をしていてそれどころではなかった。レキは何事もなかったように振る舞ったが、日々、やつれていくようになっていった。

#8 迷走 ネムの彷徨 あらたな協力者

クラモリがいなくなってからすっかり元気のなくなったレキ。仕事でも張り合いがなく、屋敷の主人からかなり心配され、保護者であるネムのところに何度も事情を伺いに来た。

 

「最近、レキが元気がないんです。やはりもともとの保護者であった人が帰郷してしまったからですか?」


 

ネムはこの事態を深刻に受け止め、クウと協力して何度もレキを励ました。ただレキにとって受けた傷は深く、なかなか立ち直れるものではなかった。


 

とある日、ネムは連盟に向かった。一度レキに休暇を取らせ、クラモリのいる街にいってはどうだろうか?一度逢いに行き、そこにいつでも行けることがわかればレキも元気を取り戻すのではないか。

 

「それはなりません。レキはこの街の白羽です。クラモリはもう手帳の期限がきれていて、随分と前にこの街から巣立って行きました。手帳の更新は今クラモリが暮らしている港町トトの異種族管理時事務局で行われています。レキはこのフラの街の住人です。ここで仕事を放棄して、その街に行けば、白羽資格を剥奪され、手帳は没収となります」

 

トーガは厳しくネムに説明した。ネムは何度か交渉を重ね、連盟を納得させようとしたが無駄だった。ネムは自分はレキの保護者として強い責任を感じていたが、このままでは壁の中にいた時との二の舞になってしまうかもしれないと思っていた。


ある日、ネムが仕事から帰ってくるとレキの姿がなかった。レキの職場に問い合わせてみても、今日は来なかったというし、クウも知らないという。

 

「まさか・・・!」


 

ネムは慌ててグリの街での大門広場の場所に位置する駅に向かった。もしかして、クラモリの住むトトの街に向かったのか?慌ててネムは汽車に向かい、汽車の車掌に問い合わせた。



「すみません、今日、ここに白羽が来ませんでしたか!?」


駅前で、汽車の整備をしていた車掌は突然ネムに尋ねられ、驚いた。



「白羽?今日は見てないね。そもそも白羽は街を出ていくときに、連盟から受け取った許可証を提示しなくては出ていくことはできない決まりになってるから汽車に乗るときは連盟に許可をもらっているはずだよ」

 

 

「わかりました!ありがとうございます」

 

ネムは再び慌てて連盟に行き、現状を説明した。そうするとトーガがこう切り出した。

 

「はい、たしかに本日レキから街を出る許可証をくださいと尋ねられました。それは渡せないと規則を説明すると、帰っていったので、諦めたのかと思っていましたが」



やはりレキはクラモリに会いにいったのだ。ネムの悪い予感が的中した。このままではグリの街と二の舞になってしまう。再びネムはレキを探しに駅へ戻っていった。

 

「ところでネム、本日はオールドホームではありませんが新たな灰羽がこちらへ来られましたが・・。あれ?」

 

トーガが説明をしようと振り返るともうそこにネムの姿はなかった。ネムは一心不乱に駅までレキを探しにいった。


駅に着くと、何やら人だかりができている。何かあったのか?どうやら汽車の運行が遅れているようだった。



「まったく、なにやってるんだよ!列車は時刻を守ってもらわないと困るじゃないか!」



「それにしても問題を起こしたのは白羽か!白羽も規則を守ってもらわないと困るじゃないか!」

 

そういうやりとりを聞いたネム。白羽が列車を遅らせた!?きっとレキだ!レキ、駅にいるのか?ネムはもう気が気でなかった。

 

「いやあ、すみません、お騒がせしました。ちゃんと連れて戻りますので、ちょっと今回だけは見逃してもらえませんか?」



「もし、このまま列車が発車していたら無賃乗車で自警団行きだったよ。君が止めてくれたから今回は見逃してあげるよ。まあ、白羽も色々あるだろうからね」



「お騒がせして申し訳ありません、ほらレキ、もう帰るぞ!あ、ちょうどよかった。あそこにネムがいるぞ!おーい、ネム!」


そう言って誰かに呼ばれたネム。だれか男の人が、レキが列車に忍び込んで街を出て行こうとしたところをとめてくれたようだ。

 

「ヒョウコ!」



確認した男の人はヒョウコだった。赤い帽子をかぶり、パーカーとリュックを背負っていた。そしてヒョウコがわざわざレキを止めてくれたようだった。


「ヒョウコ、いつこっちへ?それよりもレキ、大丈夫??」



「いつって、つい昨日だよ。まあ廃工場はボロ屋敷と関係ないから連盟もお前たちに連絡しなかったみたいだな。んで、この街のルールと、クラモリとレキの経緯を聞いて、駅に来てみりゃレキが電車に無断で乗ろうとしてたからとっ捕まえたんだよ」



「レキ、またこの街で同じことを繰り返すつもりか?まあ、気持ちはわかるけどあんまりもうみんなに迷惑かけんなよ。ネムも迎えに来てくれたし、うちに戻りな。俺にできるのはここまでだ。ネム、あとは頼んだぜ」



ヒョウコはそういうと、レキをネムに託した。レキはもうほとんど生気を失ったような表情をしていて、がっくりとうなだれていた。ネムは涙を流しながらレキを抱えシルバーホームへと戻った。

#9 ネムの焦燥 時の流れ そして夏

シルバーホームに戻ると、ネムはレキの頰を思いっきり叩いた。



「レキ、レキ、自分が何をやったのかわかってるの!?あたし、すごい心配したし、もう少しで自警団に捕まってまた罰を受けるところだったんだよ?いくらクラモリがいなくなったからって、さびしいのはレキだけじゃないんだよ!?」


がっくりとうなだれていたレキはネムに叩かれるとようやく口を開いた。


ネム、壁の中でも迷惑かけたね。ごめん。あたしはもう、またこの思いをしなきゃいけないとおもうとやりきれなかった。クラモリがあたしのそばに一緒にいるって言ったのに・・」



「またいつか会えるじゃない!今はもう灰羽じゃないし、レキだって罪憑きじゃないんだよ?」


たしかにこの街からでて好きな街に行くことは可能だった。しかし罪憑きであったレキにとって、保護下の元から離れるのは不可能だったし、何よりも手帳の更新は契約期間を満たさねばならなかった。灰羽だった時と違ってルールは厳しくはなかったが、今のレキにとって、街を出て行くことはほぼ不可能だった。


「壁を超えても、罪憑きの呪いは消えないのか・・。あたしはもう許されたと思っていたけど」


後日、再びネムは連盟を訪れた。なぜここは壁の外なのに、このような目にあわなくてはならないのか。休暇をとって、クラモリのいる街へ行くことはできないのか。



「残念ですが・・・。一旦仕事の契約を結んでしまった以上、この街から出ることは無理です。ネム、あなたであればそれも可能ですが、レキの場合は罪憑きですので、保護者が必要です。正当な理由もなく保護者であるネムとレキ、二人の白羽が何日もこの街をあければ、我々はあなた達を処罰しなくてはならない」



「けれど、ここはもう壁の中ではないのでしょう?灰羽の時のように縛られたりはしないはずです!なぜ会いにいく事すら出来ないのですか?」



ネム、あなたはもし我々がある日突然ここを留守にしたらどう思われますか?あるいはあなたの働いている仕事場が閉鎖したらどうなりますか?それと同じ事です。白羽が個人の都合でこの街を何日も空けるのは許されません。白羽は我々の掟にしたがって生活があるのです。もし、我々の紹介で就いた仕事を放棄すれば我々はもう保証も出来なくなります」



ネムは何度も粘り強く交渉をしたがやはり許可はもらえなかった。白羽が連盟によって好条件で保護されている以上、また、勤続年数の短い新規である以上、融通を利かすことは不可能だった。



ネムは家に戻るとレキに経緯を話し、とにかくレキを見守ることにした。レキは仕事を続けていたが、元気が無くなっていたので、主人が心配して何日かの休みをくれた。ネムはクウとヒョウコに現状を説明し、三人でレキを見守ることにした。クウはよく差し入れをもってシルバーホームにあそびにきた。ヒョウコはもうあまり干渉をしてこなかったが、レキが心配で時々見舞いにきた。そのおかげもあってか、レキは徐々に元気を取り戻り、仕事にもきちんと復帰できた。



「レキ、元気になってよかったね!まあクラモリがいなくなったのはあたしも寂しいけど、またいつか会えるよ!」



クウはクウなりにレキに気を使って励ました。ヒョウコは特に言葉をかけなかったけれど、とにかく元気になったレキをみて安心していた。


「そうだね、ありがとうクウ。ネムにも迷惑かけてごめん。あと、ヒョウコにもまた助けれもらえたね。今度お礼しにいかなきゃ」



そうしてまた何気ない生活が何日かしていると、春から夏になった。そして再び一通の手紙が届いた。



ネム、レキへ

オールドホームの灰羽が再び巣立たれし。すぐにこちらに来たれし 白羽連盟」



ネム、また誰かが巣立ちの日を迎えたって!すぐに行こう!」



クウの家にも当然その手紙は届いており、三人ですぐに連盟に向かった。冬が終わり、春になるとき、ネムがこちらにやってきた。そしては今は春が終わり、初夏が訪れ、またあらたな灰羽がこのフラの街にやってきたのだった。