#21 交代 相互 異例
夕方
五人はシルバーホームを出て連盟に向かった。ラッカの言っていた相互保護者の許可を得る為だ。果たしてこの申請は通るだろうか?
「五人で連盟までいくのって初めてだね!なんかみんなでこうやっていけるのって嬉しい!あとはヒカリもいればいいのに!」
クウがそう言って楽しそうにはしゃぐ。そういえば五人揃って連盟に行くのははじめてだ。レキは相変わらず話をしなかったが、みんなで行けることに嬉しさを感じていた
「ヒカリ・・・。やっぱりまだこっちにはこないのかな?ヨミとヤミもいるし」
ラッカがヒカリを思い出して懐かしそうに話す。
「まあ、あたしらはさ、あたしらでやっていってるのと同じで向こうは向こうでやってんじゃないの?あの双子だってヒカリに一番懐いてたしさ。心配しなくてもそのうちヒカリもこっちに来るって」
「うん、カナ。それはわかってる。けどやっぱり、レキが治るには、レキが一緒に過ごした人が必要なんじゃないかって。その分をこっちではクラモリさんが埋めてたみたいだけど・・・。」
ラッカがレキの心配をよそにヒカリを懐かしむ。そういえばクウもレキもこちらに来てからヒカリにだけはまだ会っていない。ヒカリはいつ来るのだろう?
そう言って話しているうちに連盟にたどり着く。寺院の中に入り、五人はトーガに会い、ラッカが今の考えを話し、相互の保護者であることを提案した
「それは不可能です。ラッカ、あなたは罪憑きでありましたね。その保護者はクウです。そしてレキの保護者はネムです。それは変えることのできない事実です。残念ですが諦めください。」
「どうしてもダメでしょうか?」
「罪憑きである白羽には保護者が必要です。ラッカがレキの保護者になるならともかく、レキが今のラッカの保護者になれるとは思いますか?残念ですが却下です」
「ではレキを元に戻す為にクラモリをもう一度こちらへ呼んでください」
ネムが強い口調でトーガに話す
「私たちは連盟の規則に従って行動しています。クラモリもそうでした。レキがこのような状態になったのは、少なくとも連盟の勝手なルールによる原因でもあります。しかしあなたたちはそれはレキの問題であると言って、こちらの提案に一切耳を貸しませんでしたよね?私もレキが治るまで休暇を多くもらい、レキも手当をいくらかいただいています。こちらの提案に耳を貸さないのであれば、やはりクラモリを呼んでいただくことをお願いします」
「そうだそうだ!クラモリを呼べ!連盟は規則規則って普段から言ってるけど、レキがこーなっても何にもしてくれないじゃないか!あたしたちだって大変なんだぞ!」
カナも強い調子でネムの言い分に乗っかる。クウは口を出さなかったが、二人と同じ気持ちだった
「トーガ、お願いします。もし私が保護者になればネムはちゃんと職場に復帰できます。クウも私についてこなくても大丈夫になるので、時間を自由に使えます。決してこちらには迷惑をかけません。どうかお願いします」
ラッカは頭を下げ真摯にお願いをした。三人も同じようにそれに続いた。トーガは困り果ててしまった
「わかりました。とは言えません。今の現状では。しかしレキがこうなったのも我々に責任がないこともないです。そしてネムにもカナにも迷惑をかけているのも事実ですね。ラッカ、ちゃんとレキの面倒を見られますか?」
「はい、私がレキの面倒を見ます。私がレキを守ります。そしてレキもきっと私が困ったら助けてくれます。私たちはみなそうやって助け合ってきたのです」
トーガはなにやら奥に行くと他のトーガとボソボソと話し合っていた。おそらく相当困っていて、今までにない事例だからなんとも言えないのであろう。そして少しすると、奥から何人か来て、話し始めた
「わかりました。ではラッカの保護者はレキ、そしてレキの保護者はラッカといたします。本日からそう決まりです。しかし一度決めたこの提案は元には戻せません。それでいいですか?」
「ありがとうございます!はい、それで構いません!」
四人は笑顔になると、すぐにシルバーホームに戻った。レキは相変わらず表情がなく話もせず元気もなかったが、その日からラッカがレキの保護者となった。
「レキ、レキ、大丈夫?今日から何があっても私があなたを守るから。心配しないで。きっとレキを救ってみせる。」
ラッカはレキにそう問いかけると、レキは少しだけなにかを感じ取ったような気がした。目の前にいるのはラッカ?レキはあまり感知することはできなかったが、ただなんとなく安心するような様子も時折見せていた